立憲民主党 枝野幸男代表 憲法改正試案について
※以下の内容は、2013年当時の安保法制・政府解釈を前提とした案であり、現在の枝野代表の見解ではありません。
枝野代表は、立憲民主党立上げ前ではありますが、2013年に、憲法9条に関する改正案(たたき台)として、9条には手を加えず、9条の2及び9条の3を追加する案を公開しています。
この趣旨及び読み方については、2013年当時、以下の国会通信で、本人が解説を行っております。
「憲法改正 第三の道」(枝野代表による条文試案及び自らの解説)
集団的自衛権行使については、以下のとおり述べています。
「そもそも個別的か集団的かという区別そのものが、ある意味で相対的なものにすぎません。解釈で歯止めをかけようとしてきたからこそ、個別的か集団的かという講学上の概念で線引きをせざるを得なかったのです。条文上で線引きをするなら、より緻密で具体的な線引きが可能です。
集団的自衛権行使に警戒感が強いのは、他国(事実上は米国)の世界戦略によって、わが国が際限なく軍事行動に引きずり込まれる可能性があるからでしょう。この点の危惧は当然であり、これを明確に排除する必要があります。しかし他方で、例えば、「日米安保条約に基づき、日本防衛のため、日本周辺に展開している米国の部隊が、急迫不正の武力攻撃を受けた場合」、これを助けに行くことまで、否定すべきでしょうか。実は、こうした限界事例について、これを集団的自衛権行使の一部容認と言うのか。それとも、個別的自衛権として許されるぎりぎりの限界として説明するのか。説明の方法が異なるだけで、どこが限界であるべきかについては、大勢の味方に大きな違いはないと思います。
こうした限界事例について、実際上の不合理を生じないように線引きして明文化した上で、その他の大部分の集団的自衛権行使については、拡大解釈が生じないよう明確に否定すること、これこそが、明確な「歯止め」となるのではないでしょうか。」
また、枝野代表の当時のオープンミーティングにおいて、本人が解説した内容を抜粋し、条文案とともに以下に記載します。
9条1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
9条2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
「現行9条1項2項、これは変えない。……第二次世界大戦で、多くの人たちにも大変なご迷惑を掛けたし、私たち自身も、先輩となる皆さんが、大変なご苦労をされることになった。やっぱり戦争はしない。とにかく、本当に身を守るために必要最小限しかしない。その決意は変わらない。そのことを示すためには、やっぱり現行の9条はそのまま残したらいい。残してもいくらでも条文は作れます。」
9条の2第1項 ①我が国に対して急迫不正の武力攻撃がなされ、②これを排除するために他に適当な手段がない場合においては、③必要最小限の範囲内で、我が国単独で、あるいは国際法規に基づき我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を守るために行動する他国と共同して、自衛権を行使することができる。
(番号は参照の便宜のため枝野代表の解説に基づき挿入)
「いわゆる個別的自衛権の普通の話。……「単独で」の後に、アメリカに手伝ってもらうならば構いませんよということを、あえて明示的に書いています。……日米安保条約に基づきということを、改めてきちんと書いてある。これはあえて言いますが、こういうことをちゃんと書いておかないと逆に危なかったりする。逆利用をされたりすると危なかったりするので、あくまでも国際法規に基づいて。つまり他国の紛争に介入する国というのは、その国のためだよと言って介入していくんですよね。……だから日本を助けてくれる国だからみんなウェルカムじゃないよ。国際法規に基づいて助けてくれる国に助けてもらうんだよというのは、諸外国に向けても宣言しておいた方がいいと思いました。我が国と条約を結んでいないのに勝手に日本を助けてあげるからと言ってくる国に助けてもらうつもりはないということを示しています。」
9条の2第2項 国際法規に基づき我が国の安全を守るために行動している他国の部隊に対して、急迫不正の武力攻撃がなされ、これを排除するために他に適当な手段がなく、かつ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全に重大かつ明白な影響を及ぼす場合においては、必要最小限の範囲内で、当該他国と共同して、自衛権を行使することができる。
「単に「他国の部隊に対して」急迫不正の武力攻撃とはしていません。ちなみに、「他国に対して」ともしていません。ここに「部隊」という2文字が入っているのは結構意味を持っている。日米安保条約でアメリカは日本を守ってくれていますが、アメリカが例えば大西洋で何かしているのが攻撃されたのを、助けるわけではありませんということです。我が国の安全のために行動している部隊ですから、まさに沖縄とかにいる部隊であったり、あるいは日本で何か起こりそうだといってハワイからアメリカの海軍が日本に向かって助けに向かっていたとか、こういうことです。……「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全に重大かつ明白な影響を及ぼす場合においては、」と書いてある。ですから私がここで認めているのは、あえて個別か集団か分けろと言われたら、個別です。……自分の国は自分で守るというものの考え方に立っています。……ただし、まさに個別的なケース、いろんなケース、これに当たるのか当たらないのかという場合分け、線引きは、いろんなケースがあり得るし、それを違う側面から切り取れば、集団的自衛権なんだという言い方をする人もあるかもしれないけれども、そんなもの学者の世界、学問の世界の話で、条文をきちんと書いてしまえば、これに当たるかどうかをしっかり判断すればよいということで、ずっと明確、明白になるというふうに思います。」
「海上自衛隊の船と、アメリカ海軍の船が、並んで走っていました。でも日本の領海ではない。領海であればいろんな理屈がつくかもしれませんが、公海上を走っていました。たまたまアメリカの海軍の船だけが攻撃をされました。まだ日本の自衛隊の船は攻撃されていません。このとき、アメリカの海軍の船を守るために、日本の自衛隊は戦っていいんでしょうか、というケースが実はあります。まさに一件一件の、これは殺人なのか、傷害致死なのかという判断、認定を、様々な事実の積み重ねの中で、一件一件全部認定が違う。というのと同じように、これを一般的に、集団的自衛権なのか、個別的自衛権なのかと線引きすること自体が、そもそも僕は無理だと思います。それが、実質的に日本に対しての攻撃であるならば、日本が攻撃を受けているとして、個別的自衛権が行使できるでしょう。でも、たまたま日本の自衛隊の船が横にいただけであって、アメリカがアメリカとして攻撃されているなら、それを助けに行ったら、これは集団的自衛権の行使でしょう。というふうに、実はこれはもう一件一件、全てのケースを想定して全てのケースの線引きなんかできません。」
9条の2第3項 内閣総理大臣は、前2項の自衛権に基づく実力行使のための組織の最高指揮官として、これを統括する。
9条の2第4項 前項の組織の活動については、事前に、又は特に緊急を要する場合には事後直ちに、国会の承認を得なければならない。
9条の3第1項 我が国が加盟する普遍的国際機関(注・現状では国連のこと)によって実施され又は要請される国際的な平和及び安全の維持に必要な活動については、その正当かつ明確な意思決定に従い、かつ、国際法規に基づいて行われる場合に限り、これに参加し又は協力することができる。
9条の3第2項 前項により、我が国が加盟する普遍的国際機関の要請を受けて国際的な平和及び安全の維持に必要な活動に協力する場合(注・多国籍軍やPKO等、国連軍創設以外の場合)においては、その活動に対して急迫不正の武力攻撃がなされたときに限り、前条第1項及び第2項の例により、その武力攻撃を排除するため必要最小限の自衛措置をとることができる。
9条の3第3項 第1項の活動への参加及び協力を実施するための組織については、前条第3項及び第4項の例による。
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