立憲民主党 枝野幸男代表 演説全文(10月10日大宮)
<立憲民主党の立上げ>
たくさんの皆さんにお集まりをいただき、足を止めていただき、本当にありがとうございます。地元に戻ってまいりました枝野幸男でございます。
ちょうど1週間前、先週の火曜日、立憲民主党を立ち上げることを決意して、一人で記者会見をして、呼び掛けました。選挙の公示まで1週間、本当に仲間が集まってくれるのか。党を立ち上げ、選挙の準備をする、立候補届出の事務などが間に合うのか。いろいろな不安の中で、でも勇気を持って立ち上がりました。そこから1週間。全国で78人の仲間が私の呼び掛けに応じて、この選挙立候補してくれました。こんな立派な宣伝カーを用意され、私の顔がでかく映ったポスターも用意され、そんなものは全部できなくても仕方がない。筋を通そう。そんな思いで1週間前立ち上がりましたが、多くの皆さんの力で今日ここまでくることができて、本当に感慨無量であります。ありがとうございます。
ついこの間まで、新しい党を立ち上げて、その党首として選挙を戦うだなんて、夢にも思っていませんでした。でも、民進党では総選挙を戦えない。そんな話になってしまった中で、残念ながら希望の党の皆さんの理念、政策は、私がこの大宮で24年間訴えてきた、その方向とは違う。そう判断せざるを得ませんでした。
「変わらぬ初心」とここ何回かの選挙訴えてきました。訴えてきた理念、政策を曲げてまで、議員を続けていくつもりはありません。皆さんに訴え、皆さんにご理解をいただき、期待をしていただいている政策を、理念を、実現するために私は選挙を戦うんだ。私は政治家をやっているんだ。その変わらぬ初心を貫かなければならないと、思いました。
はじめは、無所属で戦えばいいと思っていました。そうすれば筋を曲げずに、これまでどおりの訴えを皆さんにしながら、選挙を戦うことができる。これまでも地元で応援をしている皆さんは、民主党や民進党という以上に、枝野党として私を応援してきてくださった。そう思っていましたから、だから無所属でも戦える。そう思いました。もしかするとその方が、無所属だったら今日も一日、大宮で自分の選挙運動ができたかもしれません。でも、このままでは、投票する先がないよ。みんなどっちかの方向に偏った政党しかないじゃないか。右でも左でもない、この国の多くの国民の皆さんが思っている未来を切り開いていただきたいという、そうした声に応える力がないじゃないか。たくさんの声を全国から頂きました。
このままでは無所属で戦うしかない、新人の、まだ地盤のない、でもこの23年、逆風の民主党、民進党からわざわざ立候補することを決意して、地域で頑張ってきてくれた仲間からも、何とか自分たちの思いをチームとして訴える、そんな政党がないと困るんだという声をたくさん受けました。皆さんに支えていただき、お育てをいただき、24年、官房長官や幹事長というナンバー2の仕事を何度もやらせていただき、この夏には党首選挙にも立候補させていただきました。自分のことだけを考えるわけにはいかない。全国からも期待をしていただいている。投票先がないよと、受け皿がないよという声に、応えなければならない責任を私は背負っているんじゃないか。そう思います。
党を立ち上げれば、今日もそうですが、長年支えていただいている地元の皆様と一緒に、自分の選挙をする。地元の皆さんに訴える。その時間は短くなる。でも必ず、24年間支えていただいた、お育てをいただいた地元の皆さんには、そこはご理解をいただける。その代わり、日本のために勝てと後押しをしていただける。そう信じて決断をさせていただきました。
思いもかけず、本当にたくさんの皆さんから、今全国から期待の声を頂いています。やはり今までの政治、そして私が先週旗を立てるところまで、私たちの声が届いていない、受け皿がない、そういう思いをいただいた方がこんなにたくさんいたということを改めて感じています。この国の社会の危機を何とか乗り越えなければならない。そのためにもう一つの、しっかりとした、極端ではない、王道を行く政党を、遠からず王道を行く政権を、是非作らせていただきたい。そんな思いで立ち上がりました。
<情けは人のためならず>
私たちの国は、ある時まで一億総中流と言われていました。べらぼうなお金持ちも少ない代わりに、特別貧しい人も少ない。多くの人たちが、まあ何とか食べていけるね。ちょっとずつ良くなってるね。そんな実感を持ちながら、みんなで前に進んでいく。そんな社会だったはずです。そんな社会だったからこそ、あの焼け野原の戦後の日本、戦後復興、高度経済成長を遂げて、世界で1、2を争う経済大国にたどり着くことができたのではないでしょうか。みんながお互い様という精神で支え合う。そんな社会だったからこそ、もちろん警察の皆さんの力は強かったけれど、しかし世界一治安の良い安定した社会を作れてきたんじゃないでしょうか。
この社会が分断をされています。壊されています。何度か私は、自分の地元のビラや、配っていただいているビラでも、「情けは人のためならず」ということわざを書かせていただきました。このことわざ、半分ぐらいの人は間違った意味で受け止めています。人のために何かしたってろくなことにならないから、人のことなんか構わなくていい。自分さえ良ければいい。そういう間違った意味でとらえている人たちが半分ぐらい残っています。この社会を本来の意味に取り戻したい。私はそう思っています。誰か人のためにと思ってすることが、巡り巡って自分に返ってくる。私たちの社会はそういう社会であったはずです。それが壊れてしまっている。
強い者だけがより強くなり、豊かな者だけがより豊かになり、格差が拡大をして、貧困という言葉がこの国に、いろいろなところで語られてしまっている。世界一豊かな国だったはずじゃないのか、この国は。どうしてこんなことになってしまったんだ。私はまさに政治が役割を果たしていないからだと思っています。規制緩和、自由競争、自己責任。政治の側からこういう言葉が繰り返し語られています。確かに、私たちの社会は自由競争がベースです。みんな一人ひとりの生き方、自己責任です。でも、競争だけでは社会はまわりません。公平、公正なルールがあって、そのルールが守られている中で競争するから社会は発展するんです。誰がその公平、公正なルールを作り、守らせるんですか。政治の役割じゃないですか。
人生は、基本は自己責任だけれども、どんな人でも、人生の中に、自分の力だけではどうにもならないことが必ずある。年を取って体が弱くなって、いや急な病気になったり、急に事故に遭ったり、一生懸命働いて仕事をしているのに、どこかの国の世界情勢の影響で、勤め先が倒産して失業したり。誰にでも自分の力だけではどうにもならないことがある。そのときのために政治があるんじゃないでしょうか。その政治が自己責任をあおるなんていうのは、政治の責任放棄にほかならないと、私は思います。
本来の政治を取り戻したい。困ったときに寄り添い、お互い様に支え合う。その支え合いの仕組みを何よりも大事にする。排除するのではなくて、支え合う社会を、困ったときに寄り添える社会を、もう一度この国に立て直していきましょう。一億総中流と言われた日本を取り戻していきましょう。私はそうした今までの政治が置いてけぼりにした、そうした声をしっかりを受け止める、そんな流れの第一歩を作りあげていきたいと思っています。
<立憲主義と民主主義>
政治そのものの危機だと思います。皆さんは法律というルールに基づいて社会を構成しています。法律というルールを守らなければ、社会の秩序は保たれません。権力を持っている側が守らなければならないルールを憲法といいます。権力者がこのルールを守らなければ、社会の秩序は乱れます。
民主主義は、単純な多数決ではありません。ただ多数決を取ればいいなら、国会で議論なんかしている時間は無駄じゃないですか。なぜ国会で議論をするのか。それは、国民の皆さんに情報をお示しをして、国民の皆さんに説明、説得をして、そしてできるだけ多くの国民の皆さんの理解を得なければ、政治は前に進まないんです。
残念ながら、この5年ほどの日本の政治は、権力自ら、自分たちが守らなければならないルールを、それを軽んじ、無視し、そして国民の皆さんに、森友・加計のような問題だけではありません。あの共謀罪のときの法務大臣の答弁、皆さん覚えてますか。国民の皆さんに説明をして、説得をして、納得をしてもらって、そして前に進んでいこうという、本来の民主主義をやるつもりが全く感じられない政治が、こんなに長く続いていてしまって皆さんいいんでしょうか。
上からの民主主義。俺が決めたんだから言うことをきけ。反対の奴は排除する。こんな上からの民主主義では、21世紀の日本は成り立っていきません。価値観が多様化し、利害関係も複雑化し、様々な人たちがいる社会をまとめていくためには、もちろん1億2000万を超える国民みんなの意見が一致することはありません。でもだからこそ、情報を公開し、説明し、説得し、多くの国民の皆さんと一緒に前に進んでいくというこの姿勢が、ますます政治に必要なんじゃないでしょうか。
強い者は、豊かな人は、自由にその力を使って、どんどん動いていただければいい。でも、困ったとき、苦しいときにそれを下から支えて押し上げていく、そういう政策を進めていくべきなんではないでしょうか。上の政治、上からの策を、下からの、草の根からの民主主義、草の根からの政策へと変えていこうではありませんか皆さん。
<右でも左でもなく、前へ>
皆さんに24年お育ていただいた。お陰さまで、こうした旗を先頭に立って掲げて、この選挙を戦わせていただくことができています。何とかこの選挙を戦い抜いて、そして多くの仲間にもこの選挙に勝ち抜いてもらって、残念ながら一発ではいきません。でも、遠からず今の旗で政権を取る。その第一歩を踏み出させていただきたいと思います皆さん。
明日からも、本当に厳しい中で戦っている全国の仲間、その応援にまわらせていただきます。本当に今までとは違う、全く想像のつかない選挙の構造の中で、正直不安もたくさんあります。でもこんなにたくさんの皆さんに集まっていただきました。是非皆さんの力を貸していただきたい。皆さんの力でまず私自身が、しっかりと小選挙区で圧倒的な力で勝ち抜く。そして多くの仲間を勝たせる。そのことで、次へと向かう、日本の新しい民主主義の第一歩を踏み出させていただきたいと、お願いを申し上げる次第です。
21世紀の新しい民主主義の形を、新しい社会の形を、しっかりと示して前に進んでいきます。右でも左でもなく、前へ、進んでいきます。そのためには、私にはあなたの力が必要です。どうぞ最後まで力を貸してください。枝野幸男、皆さんのご期待に応えて、これからも初心を揺るがすことなく、筋を通して、前へ前へと進んでいきます。どうぞよろしくお願い致します。ありがとうございました。ありがとうございました。ありがとうございました。
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