自民党憲法草案の条文解説

41条~

目次
前文
1章 天皇(1~8)
2章 戦争の放棄/安全保障(9~)
3章 国民の権利及び義務(10~40)
 14 平等権
 15 参政権
 16 請願権
 17 国家賠償請求権
 18 苦役等からの自由
 19 思想良心の自由  
 20 信教の自由
 21 表現の自由
 22 営業等の自由
 23 学問の自由
 24 家族
 25 生存権
 26 教育権
 27 勤労権
 28 労働基本権
 29 財産権
4章 国会(41~64)
5章 内閣(65~75)
6章 司法(76~82)
7章 財政(83~91)
8章 地方自治(92~)
9章~緊急事態、改正、最高法規
上諭・名簿


現行草案解説
第四章 国会
第41条
 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第四章 国会
第41条(国会と立法権)
 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
  44条で、障害の有無が選挙権に影響しないことが明確になりました。従前と実質的な差異はありません(14条参照)が、例えば障害により投票所に行けない方の投票機会確保が、より充実する可能性はあります。

 選挙区割りについて現行憲法では人口要素(14条)だけが憲法上要請されているのに対して、草案47条で、地域間の一票の格差が憲法上容認されました。Q&Aに「衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条1項の規定を参考にして加えたものであり、現行法制を踏まえたもの」とありますが、この条文は2倍を超えないようにすることを定めているにもかかわらず、草案にはその部分がありません。
 Q&Aに「違憲状態にあるとの最高裁判所の判決が続いていることに鑑み」て規定したとありますから、これによって現在の一票の格差を合憲とする意図があることを明らかにしているといえます。

 54条で解散権が総理大臣に与えられました。従前は内閣の権限でしたが、従わない大臣は罷免すればよかったので実質的変化はありません。参議院の緊急集会が衆議院解散のときにおけるものしか規定されておらず、衆議院任期満了の際には開けないことになるという不備がもともとあるのですが、そこは変更されていません。

 56条でほとんど出席していなくても議事が可能になりました。

 63条では大臣が職務上の必要から出席を拒否できることが明記されました。

 64条の2ができたことによって政党の保護が厚くなりました。一方、政党要件を満たさないものや無所属議員がより不利になり得ます(現在でも政見放送の可否などに違いがあらわれています)。また、より厳格な党議拘束が可能になり得ます。
第42条
 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第42条(両議院)
 国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。
第43条
1 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第43条(両議院の組織)
1 両議院は、全国民を代表する選挙された議員で組織する。
2 両議院の議員の定数は、法律で定める。
第44条
 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第44条(議員及び選挙人の資格)
 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律で定める。この場合においては、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によって差別してはならない。
第45条
 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
第45条(衆議院議員の任期)
 衆議院議員の任期は、四年とする。ただし、衆議院が解散された場合には、その期間満了前に終了する。
第46条
 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
第46条(参議院議員の任期)
 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
第47条
 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第47条(選挙に関する事項)
 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律で定める。この場合においては、各選挙区は、人口を基本とし、行政区画、地勢等を総合的に勘案して定めなければならない。
第48条
 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
第48条(両議院議員兼職の禁止)
 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。
第49条
 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第49条(議員の歳費)
 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
第50条
 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
第50条(議員の不逮捕特権)
 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があるときは、会期中釈放しなければならない。
第51条
 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
第51条(議員の免責特権)
 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。
第52条
 国会の常会は、毎年一回これを召集する。
第52条(通常国会)
1 通常国会は、毎年一回召集される。
2 通常国会の会期は、法律で定める。
第53条
 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
第53条(臨時国会)
 内閣は、臨時国会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、要求があった日から二十日以内に臨時国会が召集されなければならない。
第54条
1 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
2 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
3 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
第54条(衆議院の解散と衆議院議員の総選挙、特別国会及び参議院の緊急集会)
1 衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。
2 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別国会が召集されなければならない。
3 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
4 前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。
第55条
 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第55条(議員の資格審査)
 両議院は、各々その議員の資格に関し争いがあるときは、これについて審査し、議決する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第56条
1 両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
2 両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
第56条(表決及び定足数)
1 両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
2 両議院の議決は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければすることができない。
第57条
1 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
第57条(会議及び会議録の公開等)
1 両議院の会議は、公開しなければならない。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
2 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるものを除き、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
3 出席議員の五分の一以上の要求があるときは、各議員の表決を会議録に記載しなければならない。
第58条
1 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第58条(役員の選任並びに議院規則及び懲罰)
1 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、並びに院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
第59条
1 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
第59条(法律案の議決及び衆議院の優越)
1 法律案は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
2 衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
3 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
4 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
第60条
1 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第60条(予算案の議決等に関する衆議院の優越)
1 予算案は、先に衆議院に提出しなければならない。
2 予算案について、参議院で衆議院と異なった議決をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第61条
 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
第61条(条約の承認に関する衆議院の優越)
 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。
第62条
 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
第62条(議院の国政調査権)
 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。
第63条
 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
第63条(内閣総理大臣等の議院出席の権利及び義務)
1 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、議案について発言するため両議院に出席することができる。
2 内閣総理大臣及びその他の国務大臣は、答弁又は説明のため議院から出席を求められたときは、出席しなければならない。ただし、職務の遂行上特に必要がある場合は、この限りでない。
第64条
1 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2  弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。
第64条(弾劾裁判所)
1 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2 弾劾に関する事項は、法律で定める。
 第64条の2(政党)
1 国は、政党が議会制民主主義に不可欠の存在であることに鑑み、その活動の公正の確保及びその健全な発展に努めなければならない。
2 政党の政治活動の自由は、保障する。
3 前二項に定めるもののほか、政党に関する事項は、法律で定める。
第五章 内閣
第65条
 行政権は、内閣に属する。
第五章 内閣
第65条(内閣と行政権)
 行政権は、
この憲法に特別の定めのある場合を除き、内閣に属する。
 軍の設置に伴って、文民条項がどんな意味を持つことになるのか問題となるわけですが、これについて、66条2項で国防軍OBが大臣になれることが明らかになりました。総理大臣にもなれます。
 なお、旧日本軍も自衛隊も現行憲法下の軍隊ではないので、現在の議論と草案の下での議論は異なりますが、参考までに現在の政府見解を紹介すると、軍OBのうち強い軍国思想の持ち主や、現役自衛官は、文民ではないとしています。強い軍国思想を持つ国防軍OBも大臣になれる点で文民統制が弱まっているといえます。

 73条6号で、権利制限・義務賦課はできないこととした一方で、罰則は設けられるようになったという条文になっていますが、その設計の合理性が見出し難いため、誤りかもしれません。

 75条は訴追から公訴提起に文言を改めたにもかかわらず、表題が不訴追特権になっており、不整合です。また、あえて公訴提起という文言に改めたということは、逮捕勾留もされないという現在の解釈は維持されないと考えられます。
第66条
1 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
第66条(内閣の構成及び国会に対する責任)
1 内閣は、法律の定めるところにより、その首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で構成する。
2 内閣総理大臣及び全ての国務大臣は、現役の軍人であってはならない
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
第67条
1 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
2 衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
第67条(内閣総理大臣の指名及び衆議院の優越)
1 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会が指名する。
2 国会は、他の全ての案件に先立って、内閣総理大臣の指名を行わなければならない。
3 衆議院と参議院とが異なった指名をした場合において、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名をした後、国会休会中の期間を除いて十日以内に、参議院が指名をしないときは、衆議院の指名を国会の指名とする。
第68条
1 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
第68条(国務大臣の任免)
1 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。この場合においては、その過半数は、国会議員の中から任命しなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。
第69条
 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第69条(内閣の不信任と総辞職)
 内閣は、衆議院が不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
第70条
 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
第70条(内閣総理大臣が欠けたとき等の内閣の総辞職等)
1 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員の総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、総辞職をしなければならない。
2 内閣総理大臣が欠けたとき、その他これに準ずる場合として法律で定めるときは、内閣総理大臣があらかじめ指定した国務大臣が、臨時に、その職務を行う。
第71条
 前二条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。
第71条(総辞職後の内閣)
 前二条の場合には、内閣は、新たに内閣総理大臣が任命されるまでの間は、引き続き、その職務を行う。
第72条
 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
第72条(内閣総理大臣の職務)
1 内閣総理大臣は、行政各部を指揮監督し、その総合調整を行う
2 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案を国会に提出し、並びに一般国務及び外交関係について国会に報告する。
3 内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。
第73条
 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
 二 外交関係を処理すること。
 三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
 四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
 五 予算を作成して国会に提出すること。
 六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
第73条(内閣の職務)
 内閣は、他の一般行政事務のほか、次に掲げる事務を行う。
 一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。
 二 外交関係を処理すること。
 三 条約を締結すること。ただし、事前に、やむを得ない場合は事後に、国会の承認を経ることを必要とする。
 四 法律の定める基準に従い、国の公務員に関する事務をつかさどること。
 五 予算案及び法律案を作成して国会に提出すること。
 六 法律の規定に基づき、政令を制定すること。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。
 七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。
第74条
 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
第74条(法律及び政令への署名)
 法律及び政令には、全て主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。
第75条
 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。
第75条(国務大臣の不訴追特権)
 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、公訴を提起されない。ただし、国務大臣でなくなった後に、公訴を提起することを妨げない。
第六章 司法
第76条
1 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
3 すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。
第六章 司法
第76条(裁判所と司法権)
1 全て司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、設置することができない。行政機関は、最終的な上訴審として裁判を行うことができない。
3 全て裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される。
 77条2項により、私人である弁護士が最高裁判所規則に従うことが明記されました。弁護士自治の否定方向の変更です。

 79条2項等により、国会議員にとって良い裁判官に長く続けてもらい、悪い裁判官にすぐに辞めてもらうという運用が法律でできることになりました。報酬の点でも司法権の独立が文言上弱まっています
第77条
1 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
第77条(最高裁判所の規則制定権)
1 最高裁判所は、裁判に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
2 検察官、弁護士その他の裁判に関わる者は、最高裁判所の定める規則に従わなければならない。
3 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。
第78条
 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
第78条(裁判官の身分保障)
 裁判官は、次条第三項に規定する場合及び心身の故障のために職務を執ることができないと裁判により決定された場合を除いては、第六十四条第一項の規定による裁判によらなければ罷免されない。行政機関は、裁判官の懲戒処分を行うことができない。
第79条
1 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
2 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し、その後十年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し、その後も同様とする。
3 前項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
4 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
5 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
6 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第79条(最高裁判所の裁判官)
1 最高裁判所は、その長である裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官で構成し、最高裁判所の長である裁判官以外の裁判官は、内閣が任命する。
2 最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。
3 前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。
4 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齢に達した時に退官する。
5 最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない。
第80条
1 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
2 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
第80条(下級裁判所の裁判官)
1 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣が任命する。その裁判官は、法律の定める任期を限って任命され、再任されることができる。ただし、法律の定める年齢に達した時には、退官する。
2 前条第五項の規定は、下級裁判所の裁判官の報酬について準用する。
第81条
 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
第81条(法令審査権と最高裁判所)
 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する最終的な上訴審裁判所である。
第82条
1 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
2  裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。
第82条(裁判の公開)
1 裁判の口頭弁論及び公判手続並びに判決は、公開の法廷で行う。
2 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、口頭弁論及び公判手続は、公開しないで行うことができる。ただし、政治犯罪、出版に関する犯罪又は第三章で保障する国民の権利が問題となっている事件の口頭弁論及び公判手続は、常に公開しなければならない。
第七章 財政
第83条
 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。
第七章 財政
第83条(財政の基本原則)
1 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使しなければならない。
2 財政の健全性は、法律の定めるところにより、確保されなければならない。
 83条2項に明記された「財政の健全性」については、「わが党がかつて提出した「財政健全化責任法案」のような法律で規定することにな」るとされています。

 86条4項は、Q&Aで「現行制度でも認めている繰越明許費や継続費などを憲法上認めるとともに、いわゆる複数年度予算についても、法律の定めるところにより実施可能とするもの」とされています。Q&Aで指摘されている通り、草案は現行法上の繰越明許費(財政法14条の3)、継続費(財政法14条の2)よりも緩やかに長期予算を認めるものとなっています。


 89条1項で政教分離が弱まっているのは、20条に対応するものです。2項で公金支出等が可能な事業の範囲が広がっており、例えば従来解釈上可能とされてきた私学助成等が今以上に行いやすい文言になっています。

 90条では、決算について両議院の承認を要することとなりました。決算は確定した実績ですから、不承認部分について法的に政府を拘束するのだとすると具体的にどうなるのかということは検討を要します。Q&Aでは、承認の効果が3項であるとしていますが、承認と3項の論理的繋がりは不明です。また、3項「により、会計検査院の検査の実効性が飛躍的に高まる」とされていますが、終わった年度についての検査報告をどの予算案にどう反映させるのかは不明です。検査を受けた決算について国会が承認するかどうか決めるという点では会計検査院の地位が低くなっています。

 91条で国民への報告が不要になったようにも読めますが、21条の2でカバーされています。
第84条
 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
第84条(租税法律主義)
 租税を新たに課し、又は変更するには、法律の定めるところによることを必要とする。
第85条
 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。
第85条(国費の支出及び国の債務負担)
 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする。
第86条
 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
第86条(予算)
1 内閣は、毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出して、その審議を受け、議決を経なければならない。
2 内閣は、毎会計年度中において、予算を補正するための予算案を提出することができる。
3 内閣は、当該会計年度開始前に第一項の議決を得られる見込みがないと認めるときは、暫定期間に係る予算案を提出しなければならない。
4 毎会計年度の予算は、法律の定めるところにより、国会の議決を経て、翌年度以降の年度においても支出することができる。
第87条
1 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第87条(予備費)
1 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
2 全て予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。
第88条
 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。
第88条(皇室財産及び皇室の費用)
 全て皇室財産は、国に属する。全て皇室の費用は、予算案に計上して国会の議決を経なければならない。
第89条
 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
第89条(公の財産の支出及び利用の制限)
1 公金その他の公の財産は、第二十条第三項ただし書に規定する場合を除き、宗教的活動を行う組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため支出し、又はその利用に供してはならない。
2 公金その他の公の財産は、国若しくは地方自治体その他の公共団体の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対して支出し、又はその利用に供してはならない。
第90条
1 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
第90条(決算の承認等)
1 内閣は、国の収入支出の決算について、全て毎年会計検査院の検査を受け、法律の定めるところにより、次の年度にその検査報告とともに両議院に提出し、その承認を受けなければならない
2 会計検査院の組織及び権限は、法律で定める。
3 内閣は、第一項の検査報告の内容を予算案に反映させ、国会に対し、その結果について報告しなければならない。
第91条
 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。
第91条(財政状況の報告)
 内閣は、国会に対し、定期に、少なくとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。



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